畑メシ、はじめます。――ITコンサルが東京で農業を始めた理由
きっかけは、岡山に住む夫婦だった。
自給自足に近い生活を送る知人夫婦。憧れはあった。でも、自分にはまだ早い気がしていた。サラリーマンとしての今を、まず楽しもうと。
そう思っていたある日、身近な友人がサラリーマンから農家に転身すると聞いた。遠い世界の話が、急に現実味を帯びてきた。
じゃあ、自分も農業を始めてみるか。
シェア畑は知っていた。でも踏み出せなかった。
仕事がメインの生活リズムの中で、「明日から農業をやります」と自分に言い聞かせても、どこかで反発が起きそうな気がした。習慣を変えるのには時間がかかる。それはわかっていた。だからこそ、いきなり重いコミットメントを取るのが怖かった。
農業ボランティアは、そのちょうどいい入口だった。
最初の農業ボランティアは、想像以上にきつかった。
体中が痛い。でも不思議と、嫌じゃない。
デスクワークでは味わえない種類の疲労だった。達成感があった。続けていくうちに気づいた。筋力が必要だと。そして、農業が終わった後、心が妙に晴れやかになっていることに。
土に触れることが、精神を楽にする。理屈じゃなく、体がそう感じていた。
手伝って作った野菜には、何かが宿っている気がする。
スーパーで買う野菜とは違う。噛み締めるたびに、その重さがある。
そんな野菜を料理するようになって、思った。この体験を、もっと多くの人に知ってほしいと。
それが、畑メシを始めた理由だ。
採れたてそのまま、キッチンへ。土のにおいがする、ごはんの話を綴っていく。

